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がんの経路を標的に:カスタムNGSパネルを用いたがんゲノム変異の高感度・広範囲な検出

本文は、本文は、下記の論文の内容から一部抜粋・翻訳したものです。
Xie J, Lu X, et al. (2016) Capture-based next-generation sequencing reveals multiple actionable mutations in cancer patients failed in traditional testing. Mol Genet Genomic Med, 4(3):262–272.


Background
がんは疾患の一種であり、由来する細胞の種類によって広く特徴付けられています。すべてのがんに共通する主な特徴は、がん細胞は通常の細胞メカニズムの制御を外れて分裂し、正常な機能を持つ細胞に分化しないことです。一般的にがんの治療は、分裂細胞を標的とする放射線療法と薬剤療法によって行われますが、健康で非がん性の分裂細胞も破壊してしまった場合、患者に重大な健康上の影響を与える可能性があります。さらにこのような治療法は、がん細胞を排除しきれない可能性があります。
比較的新しい治療法として、副作用がより少ない、特定のがん経路を標的とするがん治療法があります。しかしながら、臨床医は特定のがんの症例に、どの経路が関与しているのかを判断できなければなりません。数百または数千の変異をスクリーニングできる次世代シークエンシング(NGS)技術は、新規のがん治療の実用化に、理想的な手法と考えられます。


Experiment
Xieらは、がんの診断と治療に有効であるとされる115遺伝子を対象に、xGen® Lockdown® Probesを用いてエンリッチメント用のがんパネルを作成しました。また、がんの発達や遺伝子発現に影響があるとされる変異(indelやCNVなど)を解析するパイプラインを開発しました。
作成したパネルの性能を試験するために、FFPE、血液、胸水を含む14検体を用いてサンプル調製を行い、血液サンプルは50 - 100X、FFPEサンプルは200 - 500XのMean Coverageでシーケンスを行いました。
著者らはまた、解析が困難ながんサンプルに対する取り組みも述べています。正常細胞と腫瘍細胞の両方を含む組織標本や小さな生検組織などDNA量が少ないケースが多く、さらに多くの腫瘍生検はFFPEサンプルとして保存されており、架橋結合や低pH環境によって分解されDNAの断片化が進んでおります。これらの解析が困難なFFPEサンプルのために最適化したライブラリ調製方法を示しており、わずか25ngのゲノムDNAから解析を可能にしています。


Results
作成したがんパネルおよび解析のパイプラインは、PCR duplicatesを有意に減少させ、均一性の高いシーケンスデータを取得することができました。がんパネルの対象とした115遺伝子に対して、77–88%のオンターゲット率を取得しております。
著者らは、新たながん遺伝子や治療に関連のある遺伝子が発見された場合に対して、作成したがんパネルを更新する必要があることに言及しています。そのため、追加で解析が必要な配列に対して、容易にプローブを追加できるxGen® Probesの柔軟性を強調しています。


References
原文:Targeting cancer pathways: Sensitive, comprehensive detection of genomic alterations using a custom NGS panel
著者:Hans Packer, PhD, scientific writer at IDT.
翻訳・監修:浜本 雄次


製品フォーカス

xGen® 製品の特徴
xGen® 製品は、高品質なプローブを1本ずつ合成し、全てのプローブに品質管理及び納品量の標準化を行っています。SNPs、インデル、CNV、LOH、および転移の高感度の検出に有用で、既存のパネルを拡張したり、完全にカスタマイズされたパネルを作成したりする柔軟性も持ち合わせています。
GC含量の多い領域が取得しにくいのはプローブの合成が難しいためですが、IDTでは、プローブ1本ずつに品質管理を行っているため、納品したプローブプール内に各プローブが確実に必要量含まれています。そのため、GCリッチな領域を含むターゲット領域全体を均一に取得可能です。

» xGen®製品の特徴について詳しくはこちらをご覧下さい。
診断用のxGen Lockdownプローブも利用できます。 詳細は、japan-cc@idtdna.comにお問い合わせください。


xGen® Lockdown® Probes
新規プローブセットの作製や、お手持ちのプローブセットの拡張・補填など実験目的に合わせたプローブセットをご購入いただけます。各遺伝子から目的の遺伝子をお選びいただくプレデザイン品と、ご希望のプローブ配列を合成するカスタム品をご用意しております。

» xGen® Lockdown® Probesの詳細についてはこちらをご覧ください。


xGen® Lockdown® Panels
    エクソームおよび各疾患用に最適化されたプローブセットです。
  • ・ xGen® Exome Research Panel - エクソームシーケンス用プローブセット
  • ・ xGen® Acute Myeloid Leukemia Cancer Panel - AML(急性骨髄性白血病)用プローブセット
  • ・ xGen® Pan-Cancer Panel - 12種のがんに共通して変異が見られる127遺伝子のプローブセット
  • ・ xGen® Inherited Diseases Panel - HGMD®(Human Gene Mutation Database)に基づいた遺伝性疾患に関わる領域及びSNPsのプローブセット
  • ・ xGen® Human ID Research Panel - ヒトDNAの識別用に設計されたプローブセット
  • ・ xGen® Human mtDNA Research Panel - ヒトミトコンドリアDNAを網羅的に解析可能なプローブセット
  • ・ xGen® CNV Backbone Panel—Tech Access - ヒトゲノム全体のCNV(コピー数多型)を解析するプローブセット

» xGen® Lockdown® Panelsの詳細については、こちらをご覧ください。


xGen® Universal Blocking Oligos
 アダプター配列同士の結合を防ぐブロッキングオリゴです。xGen® Universal Blockers – TS MixはIllumina社のインデックスアダプター用に設計されており、シングルインデックスとデュアルインデックス用のどちらのタイプにもready-to-useで使用可能です。3’末端のC3スペーサー付加など非特異な配列の結合・増幅を防ぐ修飾がされており、オンターゲット率を大幅に向上させます。

» xGen® Universal Blockers – TS Mixの詳細については、こちらをご覧ください。


Additional reading

xGen® Dual Index UMI Adaptersによるインデックスホッピングの解消と低頻度変異の検出
インデックスホッピングや低頻度変異の検出に有用なDual Index Apadtersについての説明と、このアダプターを用いて得られた具体的なで実験データを開示しています。

NGSにおけるマルチプレックスとキャプチャー
プローブキャプチャー法でマルチプレックスを行った際に、一度にマルチプレックスするサンプル数によるデータの品質がどのように影響するか、を実際の実験データを用いて紹介しています。
また、サンプル量により、得られるデータの品質がどのように変わるかも併せて紹介しています。

次世代シーケンスのコントロールとしての人工遺伝子合成
NGSのコントロールとしてgBlocks Gene Fragmentsを用いる方法を紹介しています。検体のトラッキングやハイブリダイゼーションキャプチャー効率の算定など、NGS実験をさらに効率的に行うためのコツを記載しています。