筑波大学 水野先生 ~ゲノム編集を用いた様々な改変マウスの作製について~

筑波大学 生命科学動物資源センターでは、これまで1,000件以上の遺伝子改変マウスを作出してきました。
CRISPR/Cas9システムも2013年にいち早く導入し、現在も年間180件程度の実績があります。
今回は、改変マウス作製を通して医学の発展に貢献する水野聖哉先生にお話を伺いました。


    当実験センターでは、研究者の方々の要望にお応えして、主に6種類のゲノム編集を行っています。
  1. Indel:ゲノムを1箇所切断し、Indelを引き起こさせます。
  2. Deletion:ゲノムを2箇所切断し、エキソン領域等を欠失させます。
  3. Gene Fragment Knock-in:1kb~6kbの遺伝子をゲノムに挿入します。
  4. Point Mutation:1~数塩基の変異を挿入します。
  5. Tag Knock-in:タグ配列をゲノムに挿入します。
  6. Flox:遺伝子の両端にLoxP配列を挿入します。

ゲノム編集の効率とgRNAの設計
効率良くゲノム編集を行うために大切な事はgRNAの設計です。私達は実験を行う前にin vitroでgRNAの切断効率を確認しています1。(1) Indel、(2)Deletionはもちろん、(3)~(6)のノックインでもgRNA次第で効率が顕著に変わります。

Gene Fragment Knock-in と Flox
Gene Fragment Knock-inやFloxのノックインでは、数kbの遺伝子を挿入するためベクターを用います。目的遺伝子の前後におよそ1.5kbずつ計3kbのホモロジーアームを付加し、核内にインジェクションを行っています。Gene Fragment Knock-inでは、約7.5%。Floxでも約4.5%の効率で目的の改変マウスが得られています。

Point MutationとTag Knock-in
Point MutationとTag Knock-inには、ultramerを用いています。ultramerは脱塩グレード品を0.22um のPDVFで精製後にインジェクションしています。比較的納期も早く、4nmolスケールでも数百回以上のインジェクションが行えます。最大で200塩基(挿入配列72塩基含)のultramerを用いた実績もあります。なお、得られたノックインのほとんどが正しい配列でした。


当センターでは、さまざまなゲノム編集技術を用いて多種多様な目的に合った遺伝子改変マウスの受託サービスを取り扱っております。学内外問わずに受託出来ますので、まずはお気軽にご相談下さい。

生命科学動物資源センター
http://www.md.tsukuba.ac.jp/LabAnimalResCNT/sakusei.html

Reference
Mizuno S, et al: Sci Rep. 2015; 5:13632


水野 聖哉
(みずの せいや)

    略歴:
  •  2007年 東京電機大学理工学部生命工学科 卒業
  •  2009年 筑波大学大学院人間総合科学研究科フロンティア医科学専攻 修了
  •  2012年 筑波大学大学院人間総合科学研究科生命システム医学専攻 修了
  •  2012年 筑波大学生命科学動物資源センター・契約助教
  •  2015年 筑波大学生命領域学際研究センター・助教
  •  2015年 筑波大学医学医療系・生命科学動物資源センター・助教
  •  2019年 筑波大学医学医療系トランスボーダー医学研究センター・准教授

 

製品フォーカス

Alt-R® CRISPR-Cas9 System
Alt-R® CRISPR-Cas9 Systemには、ゲノム編集を行うためのキーとなる試薬が揃っています。S. pyogenesの持つCRISPR-Cas9 systemに由来する本システムは、下記の様に多数のアドバンテージがあります。
  • 他社の手法と比較し、オンターゲット率が向上します。
  • リポフェクションやエレクトロポレーションで、効率よくRNPが導入できます。
  • sgRNAやCas9 mRNAを導入した際に見られる、自然免疫を惹起しません。
詳しくはこちらをご参照ください。

Alt-R® CRISPR-Cas12a System
Alt-R® CRISPR-Cas12a Systemを用いると、これまでCRISPR-Cas9で切断できなかったサイトでゲノム編集を行えます。Cpf1でDNAを切断すると、5'突出末端となります。
本試薬には下記の特徴があります。
  • AT-richなゲノム領域でもゲノム編集が行えます。
  • Cas9では切断できなかったサイトを補填できます。
  • Cas12a NucleaseとcrRNAのみで、ゲノム編集を行えます。tracrRNAは必要ありません。
  • エレクトロポレーション法で効率よくRNPを導入できます。
詳しくはこちらをご参照ください。


Additional Reading

筑波大学 久野先生インタビュー ~KOマウス作製のためのCRISPR/Cas9デザインを全自動でできるウェブツール「KOnezumi」の開発~
久野先生と本インタビューでもお話いただいている水野先生が開発したKOnezumiについてお話を伺いました。KOnezumiは、遺伝子名を入力するだけで、KOマウス作製のためのgRNAと、ゲノム編集後にノックアウトホモ、ヘテロ、野生型等を確認するジェノタイピングPCRプライマーのデザインだけでなく、その遺伝子の配列情報や、ノックアウト後の配列情報もレポートしてくれる大変便利なウェブツールです。

理化学研究所BRC 綾部先生 ~CRISPR/Cas9、Cas12aによるゲノム編集を用いたKO/KIマウスの作製とそのコツ~
IMPCプロジェクトでノックインマウスを作製している綾部先生は、Cas9だけではなくPAMがTTTVであるCas12aでもノックイン実験を行われています。こちらのインタビューでは綾部先生の実験プロトコールに加え、gRNAや導入、ゲノム編集が上手くいかない場合のコツなども掲載しています。

ユーザーボイス of Alt-R® CRISPR-Cas9 System
ゲノム編集は、生物種ごとに最適濃度や手法が変わります。本ページでは、各生物種でゲノム編集を実践し、ゲノム改変生物を得られている先生方に実際の濃度や手法、試薬について回答をいただいております。