xGenパネルを用いた白血病・リンパ腫の個別化診断の実現に向けて
Munich Leukemia Laboratory GmbHはヨーロッパの白血病診断・研究の最先端企業です。
同社の研究チームがIDTのxGen製品を用いて、患者へのレポートの質と納期をどのように改善したかを伺いました。
同社の研究チームがIDTのxGen製品を用いて、患者へのレポートの質と納期をどのように改善したかを伺いました。
ドイツ、ミュンヘンにあるMunich Leukemia Laboratory GmbH(MLL)は、世界中の病院、血液専門医、製薬会社と連携し、細胞形態学、細胞遺伝学、FISH、分子遺伝学を用いて白血病・リンパ腫患者の診断を行っています。
2005年の創業以来、従業員数は29人から199人に増え、年間処理検体数は3,700検体から91,000検体を上回るまでになっています(図1A)。
症例検査の多くは次世代シーケンス(NGS)で行われており、IDTが製造したMLL社独自の骨髄・リンパ系パネルと、IDT xGen Exome Research Panel、アンプリコンを用いた検査(MPN、単一アンプリコン)を用いています(図1B)。
IDTとMLLは協力して、血液診断の未来づくりを行っています。
会社の設立者の一人で血液学・腫瘍学の専門家であるTorsten Haferlach博士に、MLL社がどうやって検査効率を向上させ、納期を短縮し、拡張可能なソリューションを提供したのか、を伺いました。
2005年の創業以来、従業員数は29人から199人に増え、年間処理検体数は3,700検体から91,000検体を上回るまでになっています(図1A)。
症例検査の多くは次世代シーケンス(NGS)で行われており、IDTが製造したMLL社独自の骨髄・リンパ系パネルと、IDT xGen Exome Research Panel、アンプリコンを用いた検査(MPN、単一アンプリコン)を用いています(図1B)。
IDTとMLLは協力して、血液診断の未来づくりを行っています。
会社の設立者の一人で血液学・腫瘍学の専門家であるTorsten Haferlach博士に、MLL社がどうやって検査効率を向上させ、納期を短縮し、拡張可能なソリューションを提供したのか、を伺いました。
NGSによる診断の改善
MLL社はNGSを比較的早い時期に採用しました。ヨーロッパで初めてのDIN EN ISO 15189認定企業であり、広範な突然変異データベースの構築にNGSを用いることができました。MLL社のHaferlach博士は、「NGSを使わずに研究をしていた時代があったことが信じられません」とまで語っています。
MLL社は、世界中から検査用検体を受け入れているため、世界規模の広範な検体データベースが社内に構築されました。長年、診断目的でNGSを用いていたため、他社がまだ取り組み始めた段階でも、その技術を最適化することも出来ます。
また、同社は研究中の遺伝子から得た新たな情報を用いて、診断報告書の改善に取り組み続けています。
ワークフロー、納期、データベースの構築はすべて、Precision Medicineにより「予後および推奨事項」を最適にするために細かく調整されています。
MLL社は、パネルにより解析した全遺伝子のレポートを、臨床医に提供します。各遺伝子について変異のリストが作成され、カバレッジ、感度、疾患に対する予後や診断への影響について、コメントを行っています。
MLL社は、世界中から検査用検体を受け入れているため、世界規模の広範な検体データベースが社内に構築されました。長年、診断目的でNGSを用いていたため、他社がまだ取り組み始めた段階でも、その技術を最適化することも出来ます。
また、同社は研究中の遺伝子から得た新たな情報を用いて、診断報告書の改善に取り組み続けています。
ワークフロー、納期、データベースの構築はすべて、Precision Medicineにより「予後および推奨事項」を最適にするために細かく調整されています。
MLL社は、パネルにより解析した全遺伝子のレポートを、臨床医に提供します。各遺伝子について変異のリストが作成され、カバレッジ、感度、疾患に対する予後や診断への影響について、コメントを行っています。
報告書の提出を短縮するために
MLL社では、検体の受領から診断報告書までの納期は1週間未満です(図2)。
Haferlach博士によると、xGenパネルの使用により納期を短縮できたそうです。臨床研究や独自の研究のために特定の遺伝子をターゲットとするプローブが必要な場合、MLL社はIDTからカスタムパネルを注文しています。
プローブは最初の検体が到着する前に納品されるため、診断ワークフローの所要時間も延びることはありません。
他に納期短縮を実現する重要な点として、自動化への対応があります。MLL社は2種類のイルミナ社ライブラリ調製試薬を用い、それらをプールしてxGenエンリッチメントに用いていますが、これらのワークフローは分注機器により自動化されています。
IDTのエンリッチプロトコールは、様々な手法で調製されたライブラリに対応しています。
FFPEやリキッドバイオプシー由来のサンプルなど、異なるタイプの検体を分析しているMLL社にとって、この柔軟性は重要でした。
Haferlach博士によると、xGenパネルの使用により納期を短縮できたそうです。臨床研究や独自の研究のために特定の遺伝子をターゲットとするプローブが必要な場合、MLL社はIDTからカスタムパネルを注文しています。
プローブは最初の検体が到着する前に納品されるため、診断ワークフローの所要時間も延びることはありません。
他に納期短縮を実現する重要な点として、自動化への対応があります。MLL社は2種類のイルミナ社ライブラリ調製試薬を用い、それらをプールしてxGenエンリッチメントに用いていますが、これらのワークフローは分注機器により自動化されています。
IDTのエンリッチプロトコールは、様々な手法で調製されたライブラリに対応しています。
FFPEやリキッドバイオプシー由来のサンプルなど、異なるタイプの検体を分析しているMLL社にとって、この柔軟性は重要でした。
キャプチャー方法の検討
IDTは数百種類のユニークデュアルインデックス(UDI)を用意しており、MLL社はNovaSeq™のスループットを最大限活用出来ています。
IDTのカスタムアダプターを用いることで、MLL社は以前の96検体から、最大384検体を一度にフローセルに載せることができるようになりました。
一度にシーケンスできる検体数が増えたことで、ランの回数を最小限に抑ることが出来ています。
またMLL社の研究者らは、キャプチャー技術を比較した際、IDTのエンリッチメントパネルの均一性に驚いたそうです。キャプチャーの均一性、つまりターゲット領域の良好なシーケンスデータを取得することは、MLL社の業務において重要です。
MLL社は、ターゲット領域のカバレッジが400Xに満たない場合、追加のシーケンスによる確認が必要です。そうなるとレポートの作成が遅れてしまうのですが、IDTの均一なエンリッチメントパネルは、1回のランでほとんどのキャプチャーをカバー出来ています。
IDTのカスタムアダプターを用いることで、MLL社は以前の96検体から、最大384検体を一度にフローセルに載せることができるようになりました。
一度にシーケンスできる検体数が増えたことで、ランの回数を最小限に抑ることが出来ています。
またMLL社の研究者らは、キャプチャー技術を比較した際、IDTのエンリッチメントパネルの均一性に驚いたそうです。キャプチャーの均一性、つまりターゲット領域の良好なシーケンスデータを取得することは、MLL社の業務において重要です。
MLL社は、ターゲット領域のカバレッジが400Xに満たない場合、追加のシーケンスによる確認が必要です。そうなるとレポートの作成が遅れてしまうのですが、IDTの均一なエンリッチメントパネルは、1回のランでほとんどのキャプチャーをカバー出来ています。
シーケンスワークフロー
MLL社は最近、通常の診断ワークフローの装置をNovaSeq 6000およびS1フローセルに切り替え、シーケンス1回あたりのリード数および出力データが激増しました。
NovaSeqによるシーケンス1回あたりの出力は、S1フローセルで最大400 GB、S4フローセルで3 TBとなっています。
MLL社は、シーケンス後の解析には、イルミナ社の クラウド版のBaseSpace Sequence Hub™を用い、デマルチプレックス、アライメント、変異コールにはBaseSpace Sequence Hubのアプリを使用しています。
100個未満の遺伝子からなる小さなパネル(骨髄パネルやリンパパネル)などの診断にも、BaseSpaceアプリを用いています。
シーケンスのラン1回あたりの検体数にかかわらず、現在の解析全体の所要時間は約30分です。この作業時間の短さは、クラウドコンピューターに支えられています。複数の検体を同時に解析でき、解析容量の制限がないためです。
従来は検体ごと解析を行う必要があったため、各検体の解析に20分かかっていました。
検体が多いほどデータ計算時間が長くなっていましたが、クラウドを用いることでトータルの計算時間を短縮しています。
NovaSeqによるシーケンス1回あたりの出力は、S1フローセルで最大400 GB、S4フローセルで3 TBとなっています。
MLL社は、シーケンス後の解析には、イルミナ社の クラウド版のBaseSpace Sequence Hub™を用い、デマルチプレックス、アライメント、変異コールにはBaseSpace Sequence Hubのアプリを使用しています。
100個未満の遺伝子からなる小さなパネル(骨髄パネルやリンパパネル)などの診断にも、BaseSpaceアプリを用いています。
シーケンスのラン1回あたりの検体数にかかわらず、現在の解析全体の所要時間は約30分です。この作業時間の短さは、クラウドコンピューターに支えられています。複数の検体を同時に解析でき、解析容量の制限がないためです。
従来は検体ごと解析を行う必要があったため、各検体の解析に20分かかっていました。
検体が多いほどデータ計算時間が長くなっていましたが、クラウドを用いることでトータルの計算時間を短縮しています。
スループットと品質のさらなる改善のために
白血病やリンパ腫患者の定期的な診断に加えて、MLL社は創薬を目的とした研究用カスタムパネルと、企業や研究者による解析のための多種多様なパネルを提供しています。重要な点は、すべてのアッセイをMLLとして認可する必要があることです。
MLL社はIDT製品の柔軟性を大切にしていますが、如何なるオプションを使用した場合でも、認可基準に沿う品質でなくてはなりません。
また現在、MLL社は全ゲノムシーケンス(WGS)および全トランスクリプトームシーケンス(WTS)を行っています。これらの試験は、それぞれのデータの比較によって検証が行われています。
同社の分子遺伝学部門とR&Dの責任者であるManja Meggendorfer博士によると、「データの解釈は難しいが、パネルおよびエクソームシーケンスの結果は、全ゲノムシーケンスでも細胞遺伝学的に同様」と確認が出来たようです。
MLLは現在、4,500人以上の検体をWGSおよびWTSでテストを実施し、コピー数の変動(CNV)および構造変異(SV)をWGSおよびWTSで識別できるかどうか判断し、現在の診断と置き換えることができるか検討しています。
IDTのxGen CNV Backbone Panelは、一塩基多型(SNP)も含め、ゲノム上で均一に発現し、コピー数の解析ができる設計になっています。
同社はこのCNVパネルを、既存のNGSパネルワークフローに組み込んでテストを行っており、別途実施している染色体レベルの解析をなくしたい考えです。
MLL社による臨床診断の発展のために、IDTは次世代シーケンスを利用した臨床検査室の開発テストをサポートしています。拡張性、柔軟性、カスタマイズ、自動化のすべてを連動させ、最高の品質と最短の納期を実現しています。
NGSは、臨床における診断に役立つ情報を提供し、患者さんの健康を改善するゲノムデータを生み出しています。
MLL社はIDT製品の柔軟性を大切にしていますが、如何なるオプションを使用した場合でも、認可基準に沿う品質でなくてはなりません。
また現在、MLL社は全ゲノムシーケンス(WGS)および全トランスクリプトームシーケンス(WTS)を行っています。これらの試験は、それぞれのデータの比較によって検証が行われています。
同社の分子遺伝学部門とR&Dの責任者であるManja Meggendorfer博士によると、「データの解釈は難しいが、パネルおよびエクソームシーケンスの結果は、全ゲノムシーケンスでも細胞遺伝学的に同様」と確認が出来たようです。
MLLは現在、4,500人以上の検体をWGSおよびWTSでテストを実施し、コピー数の変動(CNV)および構造変異(SV)をWGSおよびWTSで識別できるかどうか判断し、現在の診断と置き換えることができるか検討しています。
IDTのxGen CNV Backbone Panelは、一塩基多型(SNP)も含め、ゲノム上で均一に発現し、コピー数の解析ができる設計になっています。
同社はこのCNVパネルを、既存のNGSパネルワークフローに組み込んでテストを行っており、別途実施している染色体レベルの解析をなくしたい考えです。
MLL社による臨床診断の発展のために、IDTは次世代シーケンスを利用した臨床検査室の開発テストをサポートしています。拡張性、柔軟性、カスタマイズ、自動化のすべてを連動させ、最高の品質と最短の納期を実現しています。
NGSは、臨床における診断に役立つ情報を提供し、患者さんの健康を改善するゲノムデータを生み出しています。
References
原文:Quality meets efficiency to provide personalized leukemia and lymphoma diagnostics
著者:Jessica DeWitt, PhD, Scientific Writer, IDT.
翻訳・監修:浜本 雄次
著者:Jessica DeWitt, PhD, Scientific Writer, IDT.
翻訳・監修:浜本 雄次
製品フォーカス
xGen® 製品の特徴
xGen® 製品は、高品質なプローブを1本ずつ合成し、全てのプローブに品質管理及び納品量の標準化を行っています。SNPs、インデル、CNV、LOH、および転移の高感度の検出に有用で、既存のパネルを拡張したり、完全にカスタマイズされたパネルを作成する柔軟性も持ち合わせています。GC含量の多い領域が取得しにくいのはプローブの合成が難しいためですが、IDTでは、プローブ1本ずつ全てにおいて品質管理を行っているため、納品したプローブプール内に各プローブが確実に必要量含まれています。そのため、GCリッチな領域を含むターゲット領域全体を均一に取得可能です。
» xGen®製品の特徴について詳しくはこちらをご覧下さい。
診断用のxGen Lockdownプローブも利用できます。 詳細は、japan-cc@idtdna.comにお問い合わせください。
xGen® Lockdown® Probes
新規プローブセットの作製や、お手持ちのプローブセットの拡張・補填など実験目的に合わせたプローブセットをご購入いただけます。各遺伝子から目的の遺伝子をお選びいただくプレデザイン品と、ご希望のプローブ配列を合成するカスタム品をご用意しております。» xGen® Lockdown® Probesの詳細についてはこちらをご覧ください。
xGen® Lockdown® Panels
- エクソームおよび各疾患用に最適化されたプローブセットです。
- ・ xGen® Exome Research Panel - エクソームシーケンス用プローブセット
- ・ xGen® Acute Myeloid Leukemia Cancer Panel - AML(急性骨髄性白血病)用プローブセット
- ・ xGen® Pan-Cancer Panel - 12種のがんに共通して変異が見られる127遺伝子のプローブセット
- ・ xGen® Inherited Diseases Panel - HGMD®(Human Gene Mutation Database)に基づいた遺伝性疾患に関わる領域及びSNPsのプローブセット
- ・ xGen® Human ID Research Panel - ヒトDNAの識別用に設計されたプローブセット
- ・ xGen® Human mtDNA Research Panel - ヒトミトコンドリアDNAを網羅的に解析可能なプローブセット
- ・ xGen® CNV Backbone Panel—Tech Access - ヒトゲノム全体のCNV(コピー数多型)を解析するプローブセット
» xGen® Lockdown® Panelsの詳細については、こちらをご覧ください。
xGen® Universal Blocking Oligos
アダプター配列同士の結合を防ぐブロッキングオリゴです。xGen® Universal Blockers – TS MixはIllumina社のインデックスアダプター用に設計されており、シングルインデックスとデュアルインデックス用のどちらのタイプにもready-to-useで使用可能です。3’末端のC3スペーサー付加など非特異な配列の結合・増幅を防ぐ修飾がされており、オンターゲット率を大幅に向上させます。» xGen® Universal Blockers – TS Mixの詳細については、こちらをご覧ください。
Additional reading
xGen® Dual Index UMI Adaptersによるインデックスホッピングの解消と低頻度変異の検出
インデックスホッピングや低頻度変異の検出に有用なDual Index Apadtersについての説明と、このアダプターを用いて得られた具体的なで実験データを開示しています。プローブキャプチャーによるマルチプレックスに必要なサンプル量とデータの品質
プローブキャプチャー法でマルチプレックスを行った際に、一度にマルチプレックスするサンプル数によるデータの品質がどのように影響するか、を実際の実験データを用いて紹介しています。また、サンプル量により、得られるデータの品質がどのように変わるかも併せて紹介しています。